透過型液晶方式プロジェクター(LCD)の投影の仕組みと特長をイラスト付きで解説
透過型液晶プロジェクター(LCD)とは
プロジェクターの投影方式にはDLP方式、透過型液晶方式、反射型液晶方式などがあります。
それぞれ、メリット・デメリットがあり投影方式も異なります。
しかし、その投影方式が分かりにくい・・・。
そこで、ホームシアターマガジンではなるべく分かりやすく、初心者の方が読んでも何となくわかるように説明します。
以前、DLP投影方式について解説していますので、是非読んでみてください。
(参考記事)初心者でも分かる!DLPプロジェクターの「DLP投影方式」について分かりやすく解説
今回は多くのプロジェクター製品で採用されている透過型液晶投影方式のプロジェクターのしくみ、特長について解説します。
一般的には液晶プロジェクターと言われ、ホームシアター製品にも多く採用されています。
LCDって何?
LCDとは、「Liquid Crystal Display」の頭文字の略称で「リキッド・クリスタル・ディスプレイ」と言います。
読み方は頭文字のローマ字のそのままで、「エル・シー・ディー」です。
LCDは液晶ディスプレイのことで、液晶パネルを使用していることから液晶プロジェクターと言われます。
透過型の液晶パネルを光が通過し、ダイクロイックプリズムで光を合成して映像を作ります。
それでは透過型液晶投影方式の仕組みについてもっと掘り下げて見てみましょう。
投影の仕組みについて
ランプなどの光源からの光を特殊な鏡(ダイクロイックミラー)で光の3原色であるR(赤)G(緑)B(青)に分解し、各色専用の液晶パネルを通し、プリズム(ダイクロイックプリズム)で分解された光を合成してレンズを通じて投影されます。
うーん、これだけを読んで分かる人は、このページは不要でしょう。
もっとかみ砕いて説明します。
まず、液晶方式のしくみを理解するためには「光の3原色」と「特殊なミラー」「プリズム」を知る必要があります。
光の3原色について
まずは光の三原色についてです。
光の三原色とは「赤」「緑」「青」の3つの原色のことを指します。
RGBって聞いたことがあると思います。
それぞれ赤:Red、緑:Green、青:Blueで「RGB」と言います。
戦隊に出てきそうですが、これが光の三原色です。
この3つの光の色を混ぜ合わせると人間が認識できるほとんどの色が表現可能です。
下の写真を見てください。
それぞれ赤丸の部分のRGBの値を記しています。
このようにRGBで人間が認識できる色は表現できるのです。
ここでいう光の三原色の「光は」可視光線のことで、人が明るさを感じることができる光放射です。
赤外線や紫外線のことを含んでいません。
視覚可能な波長帯は約360~830nmのことを指しています。
RBGは混ぜれば混ぜるほど、明るくなる加法混色で、RGBをすべて明るさで加えると白になります。
色を混ぜれば混ぜるほど明るく(薄くなる)加法混色と言うことは覚えておいてください。
後述します、液晶プロジェクターのデメリットのひとつ、「黒浮き」の時に出てきます。
話はそれますが、プロジェクターから発する光では黒色を作り出すことができません。
それは上のRBGの重なっている図からみても分かる通りです。
では、スクリーン上で黒色に見える色は何でしょうか。
不思議なようですが、それはスクリーンの色です。
話を戻しましょう。
光の3原色については何となくお分かり頂けたと思います。
ダイクロイックミラーとダイクロイックプリズム
続いて、ダイクロイックミラーとダイクロイックプリズムについて説明します。
ダイクロイックミラーとは
ダイクロイックミラーは光を色ごとに分離する光学部品です。
ここで先ほどの光の三原色「RGB」が出てきます。
ダイクロイックミラーは光源からの光をR・G・Bに分解します。
原理的には波長の違いにより色も異なるため、その違いにより分離しています。(筆者もパーツについて詳しくないのでこの辺で)
ここでは乱暴かもしれませんが、「ダイクロイックミラー=光をR・G・Bに分離する」と理解してください。
クロスダイクロイックプリズムとは
ダイクロイックプリズムは光を合成する光学部品です。
R・G・Bのそれぞれ入射してきた光を合成します。
よって、ここでは「ダイクロイックプリズム=光を合成する」と理解してください。
これら、光を分解する部品と光を合成する部品が存在しているんだな~と知った上で、次の投影の仕組みを見てください。
投影の仕組み
前置きが長くなりましたが、それでは透過式液晶投影方式の仕組みについて見てみましょう。
前置きがあることでちゃんと理解できると思いますので・・・長くなりましたが。
上のイラストを見てください。
水銀ランプなどの光源から光が発せられます。
この発せられた光はRGBの状態です。
その光はダイクロイックミラーでRとGとBに分解されますが、最初にダイクロイックミラー①で、C:シアン(グリーンとブルーの混色)を反射させます。
よって、R:レッドが分かれました。
次にダイクロイックミラー②でG:グリーンを反射させます。
この段階で3色に分解されます。
分解されたR・G・Bのそれぞれの光は、R(レッド)表示用、G(グリーン)表示用、B(ブルー)表示用の3枚の液晶パネルの裏からそれぞれの色の光を照射して透過します。
そして、ダイクロイックプリズムで分解されたR・G・Bの光が出合い、フルカラーとなってレンズを通じて映像が投影されます。
下のイラストイメージで分解された光がプリズムで合成されることが分かると思います。
液晶プロジェクターのメリット、デメリット
液晶プロジェクターの良い点、悪い点、そしてDLPプロジェクターとの比較などから、メリット、デメリットについて見てみましょう。
メリットについて
・安定した明るい映像
RGBの三原色を常時、投写しているため光を効率良く使うことができ、明るくはっきりした映像を写し出すことができます。切れ間なく連続的に赤色、緑色、青色の光を投写しているので、安定したカラー映像となり明るい映像が得られます。
・レインボーノイズがない
これはDLPプロジェクターと比較しての話ですが、DLP投影方式の場合、虹色のチカチカした残像であるレインボーノイズが見える場合があります。
DLPではRGBのカラーホイールが高速で動き、RGBが切り替わって映像をつくる仕組み上、やむを得ないのですが、ただ、見えない人には見えないいこともあります。
弊社でも全く見えないと言う人もいれば、筆者は見えてしまいます・・・。
その点、液晶プロジェクターにはレインボーノイズが発生しません。
・お手頃価格のプロジェクターもあり、初心者でも導入しやすい
価格も安価なスターターモデルからスタンダードなモデルまで一般的に採用されている投影方式で、価格的にもお手頃な商品から揃っています。
デメリットについて
・黒浮き
透過型液晶プロジェクターは光漏れを完全に抑えることが困難で、「黒浮き」が生じやすくなります。
黒色の部分が何となくダークグレーのように見える、それが黒浮きです。、絶対的な黒の締まり、言い換えると黒の表現が苦手です。
先程の光の三原色の混色を思い出してください。
色を加えるほど薄くなる加法混色です。
透過型液晶プロジェクターではRGBに分解された光が入るため、黒の表現や濃い青を表現しようとした場合、光の漏れがあると加法混色により色が薄くなってしまいます。
液晶型投影方式にはこのようなデメリットがあります。
まとめ
透過型液晶プロジェクタ(LCD)の投影方式のしくみと特長についてご紹介しました。
投影方式については中々理解が難しいかもしれませんが、ダイクロイックミラーとダイクロイックプリズムの働き、そして分解された光が液晶パネルを透過し、プリズムで1枚の映像に結合する流れなどを知ることで、理解度は深まっていると思います。
ポピュラーなプロジェクターの投影方式にはDLPもありますので、そちらも参考にどうぞ。
(参考記事)初心者でも分かる!DLPプロジェクターの「DLP投影方式」について分かりやすく解説