短焦点プロジェクターで一般的な立上式スクリーンは使える?“何を見るか”と“どう使うか”が決め手

短焦点プロジェクターと一般的なスクリーン

超短焦点プロジェクターには専用スクリーンが前提ですが、短焦点ならどう?

極端に短い距離で大画面を映せる「超短焦点プロジェクター」は、業務用、ホームシアターでも人気があります。
投写角が非常に浅く、広角なレンズを使用するため、スクリーン表面のわずかな凹凸やゆがみが映像にそのまま影響してしまいため、このタイプのプロジェクターを使用する際は、専用の「超短焦点プロジェクター対応スクリーン」を使うことが前提となっています。
一般的なスクリーンでは映像が歪みます。

では、超短焦点タイプ程、投写距離が短くい、短焦点プロジェクターではどうでしょうか。

本記事では、短焦点プロジェクターと一般的な立上式スクリーン(超短焦点プロジェクター非対応)の組み合わせについて、実際の投影例も交えながらお伝えします。

短焦点プロジェクターの構造は、超短焦点とは決定的に違う

短焦点プロジェクターは、100インチを投影する際、1〜1.5メートル程度の距離で映すことができます。
(因みに超短焦点タイプは100インチを30cm程度の投写距離です。)
プロジェクタ―よりも後方に導線を引く事で、人影が映らず、設置スペースが限られる環境でも使いやすいことから、短焦点タイプも人気があります。

構造は超短焦点とは異なります。
超短焦点はスクリーンのすぐ手前からほぼ真上(天吊りの場合はほぼ真下)に向けて投影しますが、短焦点はもう少し距離を取り、斜め方向に映像を投射します
このため、スクリーンの凹凸や傾きに対する影響はやや軽減されており、超短焦点よりは一般的なスクリーンとの相性に余地があります

とはいえ、角度が浅いことに変わりはなく、スクリーンの状態によって映像に歪みやフォーカスのムラが出る可能性は残ります
そこで実際に、立上式スクリーンを用いて投影を行い、その使用感を確認してみました。

実際に投影

今回の検証では、スクリーンは80インチの立上式スクリーン(オーエス MS-80FN 超短焦点プロジェクター非対応)を使用し、プロジェクターはOptoma 短焦点プロジェクターGT1080HDRを使用しました。

まずは映像を投影していないスクリーンの状態です。
短焦点タイプのため、スクリーンの手前約90cmのところにプロジェクターを設置。

立上式スクリーンと短焦点プロジェクター

ごく普通の立上式スクリーンで、スクリーン面は真っすぐでなんの変哲もないスクリーンに見えるでしょう。

では実際に、投影してみます。

はじめに格子状のテストパターンで確認。
(真っ暗のお部屋ではスクリーンの様子が分からなくなるので、室内照明の一部をOFFにしています。)

テストパターン

よく見てください。
格子の上部ですが、小さく波打っていることが分かります。
比較的、端側の方が映像に歪みが出やすいです。

続いて映像です。

自然の風景で見てみると、格子よりは歪みが目立ちにくいかもしれません。
この映像だけを見るのであれば、不都合に感じない人も居るでしょう。

続いてエクセルを投影します。

背景が白いこともあり、歪みが目立ちます。
しかし、超短焦点プロジェクターのようにうねうねに波打つようなこともなく、閲覧することはできます。

OK?NG?は“用途”でも変わる

短焦点プロジェクターと立上式スクリーンの組み合わせが成立するかどうかは、見て頂いた通りです。

それをOKとするのか、NGとるのかは、用途によって判断が分かれます

ある人にとっては、多少の映像の乱れがあってもまったく気にならないかもしれません。
自然風景の写真を見て違和感を感じない人も居るでしょう。
一方で、細部の歪みやピントのばらつきが、用途上どうしても許容できないというケースもあり得ます。

つまり、「この組み合わせが使えるかどうか」は、“何を映すか”と“どの程度の品質を求めるか”によって決まると言えます。

スクリーンメーカーの立場から言うと、ご使用はお控え頂く事をおすすめしますと言います。
やはり、ピシッと平面性が高いスクリーンで見て頂くことで、高い映像クオリティが再現されます。

しかし、ご使用するのはユーザーです。
ユーザーが良いと判断すれば、それは使えるということ。
この場合のメーカーの立ち位置はアドバイスに近いでしょう。(安全性に問題があれば話は別ですが)

このような考えのもと、ホームシアターマガジンストアではプロジェクター、スクリーンの選定ご相談もたくさん頂きますが、
一概にNGと言うのではなく、お客様の用途をお聞きして、最適な機器をご案内しています。
今回の記事もそのために紹介しました。
実際の写真で見て頂く事で、これならOK、これは使えない、といったことをお客様で視覚的にご判断いただくためです。

例えば、社内会議で使用するなど、インナーでの使用で大きなゆがみが無ければ許容範囲という訳です。
とは言え、対外的なイベント等でのご使用は難しいでしょう。

写真の状況をよく確認頂き、そのクオリティで良しとするか、しないか、用途と鑑みてご検討ください。

因みに、標準焦点のプロジェクターを使用すれば、歪みは一切なく、綺麗な映像を映し出します。
(このスクリーンは標準焦点用のスクリーンです。)

まとめ

短焦点プロジェクターは、超短焦点ほどスクリーンに対する厳密な条件を求めませんが、まったく歪まないこともありません。

求める映像品質の高さに応じて適したスクリーンを選ぶ判断は必要です。
そこには用途も大きく絡んできます。

今回の使用例は、そうした判断をするためのひとつの参考材料としてください。
最終的には、ご自身の環境や目的に照らして、「これなら使える」と納得できるかどうかが判断の軸になります。

プロジェクター、スクリーン選定のご相談は下記のフォームよりお気軽にお問い合わせください。

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