スクリーンの正面真ん中にプロジェクターを置けない!「台形(キーストン)補正」のしくみと実際の様子

プレゼンテーション、イベントなどでプロジェクターを使う際、必ずしも理想的な位置に設置できるとは限りません。
たとえば、スクリーンの正面中央にプロジェクターを置こうとしても、正面真ん中には置けない、配線の都合が悪い(もう少し端側に寄せたい)、そんなことありませんでしょうか。
そして、意外と台形補正の機能があることを知らないこともあり、使い方によっては非常に便利な機能でもあります。
今回は「台形補正」、またの名を「キーストン補正」について、基本から活用例、利点とデメリットまでを整理し、分かりやすくご紹介します。
知らない人にとってはもっと早く知っておけばよかった、そのような内容でお届けします。
台形補正(キーストン補正)とは?
プロジェクターの基本的な仕組みとして、レンズから光をまっすぐ投影したとき、スクリーンと平行であるほど映像はきれいに四角く映し出されます。
スクリーンの正面から投影すると、長方形に投影されます。
しかし、少しでも傾けると台形になります。
文章ではイメージしにくいので、身近な例で考えてみましょう。
例えば、懐中電灯を壁に照らしてみましょう。
壁の正面に立ち、懐中電灯を照らすと以下のようなイラストになります。(あくまでイメージとして捉えてください。)

丸い光が均等に照らされることは想像しやすいでしょう。
では、懐中電灯を上から下に傾けて、壁に照らしてみましょう。

この場合、下側にびよーんと光が伸びて、三角形のような形になることが想像できると思います。
光の当たる距離が同じ場合、綺麗に映りますが、斜めにすることで光に遠近が生じます。
斜めの懐中電灯を正面に当てている角度と同じように頭の中で回転させてみましょう。
そうすると、斜めの壁に充てていることが想像できると思います。
この光の変化を補正してするのが、プロジェクターでいう台形補正(キーストン)です。
活用法:こんなときにキーストン補正が便利!
キーストン補正は、以下のような場面で力を発揮します。
スクリーン正面にプロジェクターを置けないとき
部屋のレイアウト上、プロジェクターを正面中央に置けない場合、もしくは置きたくない場合があります。
例えば、スクリーンの真ん中正面には人の動線がある──このような状況でも、左右どちらかにプロジェクターをずらして設置し、**横方向の台形補正(水平キーストン)**を使えば、映像の形を正しく整えることができます。
イベント会場で人や設備がスクリーン前を遮るとき
イベントやセミナーなどでは、ステージ中央に司会者や講演者が立ちたい場合でも、プロジェクターをずらして設置し、斜め方向から投射して台形補正で整えることで、映像の見栄えを維持できます。
天井や床に設置したときの上下方向の調整
プロジェクターを天井に吊るしたり、床に置いたりする場合も、映像が上や下に広がって台形になります。
このときは垂直方向の台形補正を使うことで、正しい長方形に補正できます。
写真で補正の状況を見てみましょう
正面設置:補正不要の四角い映像

斜め設置:補正なしの台形映像

斜めから投影することで、台形の形になっています。
正面投影と斜め投影の写真を重ねてみましょう。
映像の形が全然違います。
斜めから投影することで、右側の短編が短くなります。

台形補正を施します。

写真の重ね合わせです。

斜め設置:キーストン補正後の四角い映像

写真の通り、プロジェクターを斜めから投影してもスクリーン上の映像は長方形に補正されました。
これが台形補正です。
ビフォア・アフターで比較すると、

このように、プロジェクターの設置自由度が大きく広がるのが、キーストン補正の魅力です。
今回は説明用に画面サイズ(70インチ程度の短焦点プロジェクターを使用)を小さく映しています。
そのためプロジェクターを移動量が少ないように見えますが、標準焦点プロジェクターで100インチ等となりますと、3m前後の投写距離となりますので、その効果(移動量)は大きいです。
スクリーン真ん中正面のスペースをあけることができます。
キーストン補正の利点
- 設置位置の自由度が高まる
家具配置や配線の関係で中央に設置できなくても、補正機能で映像が整えられるため、柔軟なレイアウトが可能です。 - イベントや仮設環境で重宝
毎回環境が変わるような場所でも、臨機応変に対応できます。 - 手動・自動の両対応機種もあり操作が簡単
最近のプロジェクターは、自動で映像を補正してくれるモデルもあり、初心者でも扱いやすくなっています。
キーストン補正のデメリット
一方で、キーストン補正には以下のような注意点もあります。
- 画質の劣化
台形補正は映像を引き伸ばしたり縮めたりするため、映像が劣化します。
特に映像品質に拘るホームシアターユーザーの使用時は注意が必要です。 - 補正範囲に限界がある
斜めに置きすぎると、補正しきれないことがあります。
プロジェクターの仕様表には補正量○○°といった記載がありますので、角度を目安に補正をするようにしましょう。
まとめ
キーストン補正は、プロジェクターの設置自由度を飛躍的に高めてくれる便利な機能です。
「どうしても正面に置けない、置きたくない」「斜めから投影したい」──そんなときに、映像をきれいな四角形に整えてくれます。
ただし、使いすぎると画質の劣化や歪みが生じる可能性もあるため、使いどころを見極めながら活用するのがポイントです。
台形補正の機能をうまく使いこなせば、より柔軟で快適な映像環境を実現できるでしょう。